マドンナリリーの花言葉
「やっぱり屋敷に残ろうかな」
ローゼがため息交じりに言うと、ジルケが「思い出した!」と言いながら手を叩いた。
「ディルク様も明日は休みだっていう話よ?」
「え?」
「ディルク様、月に一度必ずお休みをとるの。私、あなたがくる前は朝の花の受け取りをしていたけれど、その時に必ず花を分けてもらいに来るわ。なんでもご両親のお墓参りにいくんだとか」
「お墓参り? じゃあディルク様にはご両親がいないの?」
ディルクの正確な年齢は知らないが、領主のフリードとそう変わらないだろうから、二十代であることは間違いないだろう。まだ両親を亡くすような歳ではない。
「そのようよ。ナターリエ様はなにか知っているみたいで、当然のように花を渡してる。私、一度聞いてみたんだけど、詳しいことは教えてくれなかったわ」
「そう……」
まだ若いのに両親を亡くしたなんて、ディルクはきっと苦労しているのだろう。
それにしても毎月のお墓参りというのは頻繁すぎないだろうか。それほどまで両親を失ったことが彼の傷になっているのか。もしくはお墓参りなどカモフラージュで、女性に会いに行ってるとか……?
その一つの思い付きは、ローゼの頭から離れない。
(そうよ。あの物語でも、ヒロインがなびくまでずっと花束を贈り続けてた)