マドンナリリーの花言葉
「エミーリア様」
ローゼは不安のあまり泣き出したい気持ちだった。そんな彼女を気遣ってか、エミーリアは彼女の手を握り「大丈夫よ。私から離れないで」と慰める。
しかし、更に緊張を高めるような出来事が起こる。クラウスがフリードとギュンターを従えてやって来たのだ。
(うそ、第二王子殿下が?)
ローゼはパニックだ。ただでさえ、不相応な身分でこの舞踏会に潜入しているというのに、第二王子の怒りをかったら、大変なことになる。
「やあ、エミーリア殿。このたびは花をありがとう。ギュンターにも世話になっている」
「クラウス様、お久しぶりでございます。花を選んだのはこちらの娘ですわ。ローゼと言います」
(エミーリア様ー!!)
目立たないように後ろに隠れていたというのに、エミーリアによって突然引っ張りだされ、ローゼは慌てた。
震える足を何とか奮い立たせて立ち上がり、深々と礼をする。
「お、お初にお目にかかります。ローゼ=ブレーメンと申します……!」
「先ほどから人の噂になっているよ。とても美しい娘が入り込んでいるとね。……顔を上げてくれないか?」
「そんな、滅相もない。王子殿下のお目に入れるような立場ではございません」
「つまらないことを言うなよ。この場にこうして出て来た以上、身を縮めているのはよくない」
クラウスは、ローゼの顎に手を掛け顔を上げさせる。
一瞬目をすがめて、震えるローゼの顔をじっくりと見分する。