マドンナリリーの花言葉
「父に……って、アンドロシュ子爵ですか? 彼は自領からほとんど出てこないのでは」
「出てこなくとも、従者を各所に送り、人の噂を集めるのが父の趣味だ。いやらしい金貸しなんだよ。金に困った貴族を見つけては融資の話を持ち出し、実際には利子で搾り取る。俺は父のそんな仕事が嫌で別邸に住んでいる」
「しかし、ローゼは、……彼女は子爵家とは何の関連もありませんよ」
ディルクの返答に「知らずにつれてきたっていうのか?」とエーリヒは呆れた様子だ。
「いいか、パウラには子がいた。死んだことになっているが生きているんだ。……父は殺せと命じたが、俺が根回しして逃がしたんだ。あれだけそっくりなら血縁者であることは間違いない。彼女はパウラの娘だ」
確かめることを遠回しにしていたローゼの身の上が、意外な人物から明かされ、ディルクはどう対応していいか分からない。
「……どういうことか教えていただけますか」
「話せば長い」
「けれど聞かなければ動きようがありません」
「……アンドロシュ家にとっては家名に泥を塗るような話だ。……だか、君がドーレ男爵の息子ならば言わねばならないだろう」
エーリヒは、顔をしかめたまま肩を落として話始めた。