マドンナリリーの花言葉
エーリヒのまなざしは真剣で、話にも矛盾はない。
パウラの侍女ゾフィーから感じたような違和感はなく、ディルクは素直にエーリヒの言動を信じることにした。
「エーリヒ様、ありがとうございます。またいつかお話を聞かせていただいても?」
「ああ、いくらでも。……君にも、いつか謝らなきゃならないと思っていたんだ。ドーレ男爵を巻き込んだのは俺だ。なのに、残された君に何もしてやれなかった。本当にすまなかった」
思わず口元を緩め、ディルクは深々と頭を下げた。
「そう思っていただいただけで十分です。……ローゼを探してきます。ご忠告ありがとうございました」
「気をつけろよ」
エーリヒに頷いて、ディルクは音楽の奏でられる広間へと戻った。しかし、先ほどまでソファで座っていたはずのエミーリアとローゼの姿が見えない。踊りに興じる人々の間を潜り抜けながら辺り一帯に視線を巡らせるが、ふたりの姿を見つけることはできなかった。それどころか、第二王子とギュンター、それにフリードの姿もなくなっている。
「……どういうことだ。みんな、どこへ行ったんだ?」