マドンナリリーの花言葉
フリードが扉をあけたとき、途方に暮れたようにエミーリアが眉尻を下げていた。
「あ……フリード、探してたのよ。ねぇ、ディルクが走って行っちゃったけどどうしましょう」
「詳しい話を、エミーリア。ディルクはローゼを探しに行ったんだろう。しかし闇雲に探しても仕方ない。順序立てて教えてくれ」
招き入れられた執務室に、クラウスとギュンターを見つけて、エミーリアは気まずそうに頭を下げる。
「……気が付いたら、後ろにいたはずのローゼがいなくなっていたんです。悲鳴があがればわかると思うし、自分から私の傍を離れるような子じゃありません。いったい……何がどうなっているのか」
「落ち着いて、エミーリア殿。まずは座るといいよ。大丈夫。今日は僕が最も頭が切れると信じている君の兄上がいるからね」
仰々しい言い方でおだてるクラウスに呆れつつも、ギュンターはエミーリアを見やる。
「詳しく聞こうか。悲鳴をあげずに移動したというときは、顔見知りの犯行を疑うのが定石だよ。とはいえ、彼女は身分から言っても、この場に知り合いなどいないだろう。怪しいと思われる人物はおのずと限られてくるはずだよ」
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