マドンナリリーの花言葉


「パウラ。娘が来てくれたよ」


玄関から中へ招き入れられると、広いエントランスホールがあった。正面に階段があり明かりとりのステンドグラスがついていて、教会かと見まごう雰囲気がある。階段を中心として両脇に部屋が続いていた。

一行は広い応接室へと招かれる。窓が壁に並ぶようにいくつもとられていて庭が良く見渡せた。室内にはソファのほかに椅子がいくつも置いてある。

そこに、侍女に支えられる形でパウラが立っていた。三十を超えているとは思えぬ美しさだが、レモン色とグリーンを組み合わせたドレスはさすがに若々しすぎて違和感がある。

パウラは一瞬目を大きく開いたが、すぐに目を伏せて侍女の袖をぎゅっと握る。


「パウラ様、お嬢様がいらっしゃいましたよ」


侍女は涙ぐみながらパウラの手をそっとローゼのもとに引き寄せる。
ローゼもパウラを近くで見るのは初めてだ。顔の形も髪の色も本当に驚くほどそっくりだった。
唯一違うところがあるとすれば口の形だ。ローゼはおちょぼ口で下唇が厚いが、パウラの唇は薄い。


「……あの」


戸惑うローゼを、パウラは無言で抱きしめた。
パウラからは香を焚き染めたようないい香りがした。ローゼの母とは違う、柔らかい肌。少しも生活臭がしない彼女を母と言われても違和感しかない。


「……嘘でしょう? 生きていたなんて」


ところが言葉を発した途端に、その印象はがらりと変わった。予想より低く、泣きそうに震えた声だ。真に迫っていてローゼにヒヤリとした感覚を抱かせる。
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