マドンナリリーの花言葉
「パウラは下がっていなさい。……ディルク君と言ったな。血気盛んなところは父上譲りなのかな? 言っておくが、君がローゼの婚約者だという話も、私は親として賛成できない」
「あなたはローゼの親ではないでしょう」
「この見た目で疑うのかね? この子はパウラと私の娘だ」
「彼女がパウラ夫人の娘であることは間違いないでしょう。しかし、あなたが父親かどうかは別だ」
この言葉は、アンドロシュ子爵の怒りを買った。
「失礼な、私の妻を侮辱する気か? 流石は妻を誘惑し、攫おうとしていた男の息子だ。あの時のことだって私は許してはいない。当人が自殺してしまったから諦めたが、私は賠償金を請求するつもりだったんだ。ちょうどいい。君が代わりに支払いたまえ。それができないのなら、ローゼを置いて去るがいい!」
ディルクがぐっと詰まったその瞬間、後ろに佇んでいたはずのクラウスが、尊大な態度を表に出した。
「黙って聞いてれば、本当に口だけは達者な爺さんだな」
「なんだ? お前は」
「ご高齢の子爵殿は王族の顔も忘れたらしい」
ふっと笑うと、クラウスはかつらを取り払う。見事な金髪が現れ、子爵はもとよりゾフィーやパウラも彼のほうへと視線を向け、驚きで息を止めた。