マドンナリリーの花言葉
「えっ、えっと、……私、難しすぎてお話が分からなかったんですけど……」
しどろもどろになりながら、目を白黒させるローゼに場が一気に和む。パウラは苦笑しつつ、クラウスの手から離れローゼの前に立った。
「あなたは……本当に私の子なのかしら。たしかに顔は似ているけれど、実感が湧かないわ。私、ずっとあの子は死んだんだと思っていたんだもの」
「私も、育ててくれた母を実の親だと信じていました。……今も、母はあの人だけだと思っています」
おずおずと、だがはっきりといったローゼに、パウラは少しだけ寂しそうな目をする。
「そうね。当然だわ、……でも少しだけ、一緒にいさせてくれないかしら。あなたのこと、いろいろ教えて欲しいの。母親だなんて呼ばなくていいわ。ただ失った時間をほんの少し取り戻させてほしいの」
ローゼは戸惑いながらも頷く。それを見て、フリードも立ち上がった。
「ではしばらくパウラ様はこちらで預かります。荷物などはまた引き取りに参りますので」
クラウスも頷き、ダークブラウンのかつらを振り回しながら笑う。
「そうだな。帰ろう。エーリヒ殿、子爵が回復したらまた教えてくれ。だが絶対に彼らを外へは出さないように」
「分かりました」
「では我々は戻ろうとしようか」
クラウスが陣頭に立ち、一行はクレムラート家への帰路についた。