マドンナリリーの花言葉
十分ほど走ったところに、教会の建物があった。ディルクの馬がつながれているのを見つけたローゼは、少し離れた位置に自分の馬をつないだ。
教会の裏には墓地がある。
木々が多く、虫が多く飛んでいた。
気になりながらも、身を隠したいので木々の茂ったあたりを動く。
と、墓地内の道を順番に歩いていくと、奥に十字の石碑の建てられた墓があった。
そこに、ディルクと二人の女性がいる。
「……嘘」
てっきり、ディルクはひとりで墓参りに訪れたのだと思っていた。
隠れて残りの二人の女性を探る。
ひとりは、高級そうなドレスを着ていて、ローゼと同じピンクがかった金髪を緩く結い上げている。もう一人はいかにもお付きの侍女といった風の、地味なドレスの女性だ。金髪の女性のほうがどこか体が悪いのか、侍女が体を支えるようにして移動している。
更に少し近づいて、顔の判別ができるくらいになったとき、ローゼは目を見張った。
その金髪の女性の顔をどこかで見たような気がしたのだ。陶器のように白い肌、すっと通った鼻筋、アーモンド形のくりっとした瞳。まるでお人形のような表情。
(私に、そっくり……!)
遠目だからかと瞬きを何度もした。しかし、どう見ても自分に似ている。ドレスは落ち着いた深緑色で、おそらく年齢はローゼより上だろう。
(どういうこと? もっと近くで)
ローゼは彼女の顔を見たくて、少し前の木まで移動しそこに隠れながら覗いた。
すると落ちついた声が聞こえてくる。