マドンナリリーの花言葉
「……もう、無理だ」
ぼそりとこぼした言葉をきっかけに、ディルクは初めて、自らの意思で理性を放り捨てた。
「嫌なら声を上げてくれ」
「え?」
そう言ったかと思うと、ディルクは彼女を彼女を抱き上げてベッドに運んだ。やわらかいクッションに沈んだ体を、夜着の上から指で撫で、体を震わせる彼女の吐息を吸い込む。繰り返すキスは、回数を重ねるごとに深くなり、ローゼはすぐに息も絶え絶えになって涙目になった。
潤んだ瞳もまた絶妙にディルクの情欲を駆り立てる。
「俺は君を愛している。こんな気持ちは初めてだ。……ローゼ。愛しているローゼ」
熱に浮かされたようなディルクの声は、ローゼの体をこれ以上ないくらい火照らせた。
「嬉しいです。……嬉しい、ディルク!」
「君は俺のものだ。……誰にもやらない。俺だけの」
余裕もなく明かりが消され、ディルクはうわごとのように愛をつぶやいた。
ローゼは初めての経験に戸惑い、彼からのキスに安堵し、振り子のように感情を揺さぶられながら、その痛みを乗り越えた。まさに、予想外の夜だったが、そのまま眠りについたふたりは、今までで一番安心したような寝顔だった。