マドンナリリーの花言葉
エピローグ
ひと月後、国王と重臣の集まる会議で、ドーレ男爵の爵位復活が宣言される。
その経緯は、第二王子クラウスから説明された。
発端は、アンドロシュ子爵子息、エーリヒからの『本邸で軟禁状態にある女性を保護してほしい』という告発だ。
内々にそれを聞いた第二王子クラウスは、領内の上位貴族に当たるクレムラート伯爵と相談した。
彼の屋敷に勤める使用人の娘が、監禁されているという女性とそっくりだということから、その娘も連れて真偽を確かめに向かったのだ。
そこには、クライバー子爵家の生き残り、パウラ=クライバーが軟禁されていた。
クラウスは彼女を渡すようアンドロシュ子爵に申し入れたが、彼は剣士をけしかけて反発した。そのとき、彼を守ったのが、クレムラート伯爵と彼の側近でありドーレ男爵家の生き残りであるディルクだ。クラウスは、彼らの協力を経て無事パウラを救い出した。
捕らえたアンドロシュ子爵家の使用人たちの証言から、ドーレ男爵家が爵位剥奪となった九年前の事件も、アンドロシュ子爵の企てによるものだったと判明。これにより、ドーレ男爵の汚名は晴らされたのだ。
アンドロシュ子爵からは爵位をはく奪。しかしながら今回の件で尽力した息子の勇気をたたえ、そのまま子爵位は息子に継承させることとした。子爵は捕らえられたが、怪我の回復が芳しくなく、幽閉塔の些末な部屋で寝たきりの生活を送っている。
会議の場には、フリードもディルクも出席し、ディルクは、その場でかねてから婚約中のローゼとの結婚を宣言する。
この娘こそ、クラウスがアンドロシュ子爵の屋敷から救い出したパウラにそっくりだと言われた娘である。
双方がクライバー子爵家の生き残りであることは間違いないと判断され、パウラの身柄は縁者であるドーレ男爵家に委ねられることとなった。