マドンナリリーの花言葉
一瞬静まってしまった謁見室の空気を再び動かしたのは国王だ。
「ごほん。……とにかく、お前が結婚したいという気持ちになったことは好ましい。だからそれを反対する気はないのだが。……ううむ、はあ」
ため息はパウラの心に突き刺さる。こちらには悪気はなさそうだが、やっていることはクラウスと一緒だ。
(さすが親子だわ)
パウラの胸もキュッと痛む。けれど顔には出さない。少女のように泣きじゃくることも、クリスティアーネのように侮辱に耐えかねて立ち去ることもパウラにはできない。
ただ望まれる表情でその場にいること、それがパウラの十八年の成果なのだ。
「父上、クラウスが愛する人を見つけたのですよ。認めてあげてはもらえませんか。世継ぎについては私も努力いたしますから」
「ううむ。それはもちろん。お前に子が出来るならなによりなんだが……」
「それに、パウラ様はまだこんなに若々しくお美しい。子供はきっとじきにできます。どうかクラウスの希望をかなえてやってください」
クラウスとは反対の誠実そうなフェリクスのとりなしにより、国王は渋々といった態度だったが頷いた。
こうして、パウラは微妙に禍根を残しつつも、クラウスの婚約者であると認められたのだ。