マドンナリリーの花言葉


東の宮の三階は主に住む人間のためのスペースだ。パウラはまだ客人という扱いだが、クラウスが用意した部屋は三階にあり、クラウスの主寝室からもほど近い。

謁見で疲れたパウラは早々にベッドへ入っていた。しかし、体を揺すられ、何事かと目を開けると侍女のヘルマが困った顔で上から見つめていた。


「パウラ様。起こしてしまって申し訳ありません」

「いいのよ。どうしたの?」

「クラウス様がお呼びです。ああ、着替えはなさらずそのままでいいと」

「……夜着のまま来いと?」


パウラは眉をひそめたが、恐縮しきっているヘルマを見ると彼女を責めるのは可哀想だ。


「全く。夜這いなら自分でいらっしゃればよろしいのに」


パウラは立ち上がり、ヘルマの差し出したガウンを羽織る。


「クラウス様は王子様ですから」

「そうね。わがままで、なんでも自分の思うとおりになると思っていらっしゃるわ」


それでも言うことを聞いてしまうのは、クラウスの風格のなせる技なんだろうか。
呆れるところもあるが、クラウスには不可能と思うことを可能にするところがある。結婚の話だって、パウラは認めてもらえるなどとは思っていなかったのだから。


クラウスの部屋の前まではヘルマについてきてもらい、扉をノックする。


「クラウス様? パウラです」

「入ってくれ」


返事と同時にひとりで中に入ると、クラウスはワインを片手に椅子に腰かけていた。


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