マドンナリリーの花言葉
「正妃に、兄上との子が出来ることが喜ばしいんですよ。……あなたは子ができないのは兄のせいだと思っているようですが、あなた自身が産まず女である可能性を考えたことはないのですか?」
「それを証明するために、あなたが必要だと言っているのよ。……あなたとの子なら、王家の緑色の瞳も継承できる」
「申し訳ないですが、俺は好きな女しか抱きません。まして兄嫁など論外です。お帰り下さい」
「私だって嫌よ! でも仕方ないじゃない。世継ぎがいるの。王家の血を引く子供が必要なの。私を王太子妃にするために、うちの父がどれだけ尽力したか知っているでしょう? 父はうちの血筋の子を王にしたいのよ。王太子妃になったとき、あんなに喜んでくれたのに、子が産めないというだけで私は役立たず扱い。お願いよ。もう最後の手段なの。そのためなら私、なんでもするわ」
「何を……」
ガタガタ、と物音がした。パウラは恐怖心から足が動かない。口元を手で押さえ、隙間から見える中の光景に絶望的な気持ちになっていた。
クリスティアーネが、突然クラウスに抱き付き、唇を奪ったのだ。
クラウスが彼女を突き飛ばしたのと同時に、彼女の手から薬瓶が落ち、割れた。クラウスは口元を伝ったその液体を拭いながらクリスティアーネを睨みつけた。
「……何を」
「媚薬です。……私たちだって、ちゃんと努力していました。妊娠しやすい日を算出し、時には盛り上げるためにこんな薬も使って。……でもできなかった。これは最後の手段なの」
「やめろ、汚らわしい」
「穢れてなどないわ。私は名門アーレンス侯爵家の娘よ」