マドンナリリーの花言葉
(私と似たこの女性。ディルク様は私を見ていたんじゃない。……私を通して、この人を見ていたんだ)
苦しくて辛くてそれ以上は見ていられなかった。
急いで馬のもとに戻り、勢いよく飛び乗る。馬は一瞬不満の声を漏らしたが、「早く。家に帰るのよ早く」とローゼが手綱を操るので、後は従順に駆け出した。
馬の背で、ローゼは涙を流れるがままに流した。風に吹かれて後ろに流れていくそれが、ディルクを想う気持ちならばいいのにと思いながら。
涙が落ちついてくると腕の痛みが気になってくる。
良く見れば、血で袖が濡れていた。
服を無尽蔵に買えるほどローゼの家は裕福ではない。これだって繕ってまた着ることになるだろうに、血のシミはとれるかしらと心配になった。
散々だ。
こんなことなら、ディルクを追おうなんて思わなければよかった。
よけいな好奇心が、恋の終わりをあっさりと引き寄せてしまった。