マドンナリリーの花言葉
「お土産、ですか?」
「あけてごらん」
ローゼはディルクの隣にちょこんと座り、平べったい箱を受け取った。
見上げると、ディルクは相当馬を飛ばしてきたようで、首や額のあたりがしっとり湿っている。
先に拭いてあげたいとも思ったが、反応を楽しみにするようにディルクがじっと見ているので、ローゼは箱を開けた。そして、そこから漏れ出した甘い匂いに思わず歓声をあげた。
「……チョコレート!」
「王城で食べて。……どうしても君にも食べさせたくて、クラウス様に職人を紹介してもらったんだ。その工房に寄っていたら少し遅くなってしまってね。連絡もなく悪かった」
「いいえ。ありがとうございます。あの、……食べてもいいのかしら」
「もちろん」
言われて、ローゼは一粒手に取って口に入れた。
滑らかな舌触りで、苦みと甘みのバランスも最高だ。
「おいひぃです」
口の中のものが無くなる前に言ってしまって、口が回らなくなってしまった。
ディルクにはそれがツボだったらしく、くっと噛み殺した笑いを漏らしたと思ったら、顔を隠すようにして体を震わせていた。
「もう! 笑うならちゃんと笑ってくださいってば」
「いや。急いで帰ってきた甲斐があったな」
「え?」
ディルクの腕が伸び、ローゼは肩を抱かれて引き寄せられた。
「君の笑う顔を見るために、どうしても今日帰りたかったんだ」
ディルクの力は緩まず、胸に抱かれるのかと思ったら膝に頭を乗せられてしまった。