マドンナリリーの花言葉
外ではディルクが待っていて、馬の背を優しくなでている。ローゼの顔を見ると気まずそうな表情になった。
「ローゼ」
「お話を聞きます。でも家では心配をかけるので」
「ああ。少し走ろうか」
先ほどより花束の分荷物が減っているからか、それとも慣れたからか、馬は軽快な足取りで進んでいく。
ディルクは途中にある村で馬を止め、ローゼをおろした。
「何か食べないか?」
「はい」
村には夜には酒場になりそうな食堂があった。木造の横に広い建物は、カウンターの奥に酒瓶のいっぱい入った棚があり、更にその奥に調理スペースがあるようだ。四角い形の武骨な印象のテーブルがいくつも並び、半分くらいは埋まっている。
ディルクは軽食を頼み、奥のテーブルへ陣取る。
「あまり大きな声で話せるような話じゃないんだ。悪いが隣に座ってくれるか」
大きなテーブルは対面では遠すぎる。言われるがままローゼはディルクの隣に腰を落ち着けた。
少し動けば腕と腕が触れ合ってしまいそうな距離で、もう振られているというのに胸のときめきを止めることができない。
「あの、……さっきは盗み聞きなどしてすみませんでした」
まずは自分の否を謝った。するとディルクは少し表情を和らげた。
「いや。……驚いただろう。俺も君を初めて見た時は驚いたんだ。彼女にあまりにそっくりで」
“彼女”という言い方に親密さを感じて胸が痛む。