マドンナリリーの花言葉
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三年ほど前。
墓参りに訪れたディルクは、まるで夢うつつの中で生きているようなパウラに出会ったのだ。
ドルテア国の一般的な墓は個人ごとに作られ、使用年数は契約によって決められる。契約年数を超えた墓地は新たに契約した他の人間のものとなるのだ。
王家や大貴族はその例に入らず歴代の墓を持っているが、ドーレ男爵家はそこまでの大貴族ではない。加えて、事件を起こしての心中と自殺だったため、母方の親族は誰もが関わるのを嫌がった。結局、クレムラート伯爵の計らいで、ゆかりのある教会が管理している墓地の一角に墓が用意され、ディルクの両親と妹は横並びの三区画に埋められている。墓地使用料は没収された財産の中からの差し引かれ、通常の年数――二十年分の使用料が支払われているという。
早くに死なれたので、自分が生きている間くらいは、追加で支払うこととなるだろうとディルクは思っていた。
墓は自分の土地と同じ扱いになり、周囲に花を植えたりすることも可能だ。周りには、庭のように整えられた墓ががいくつもある。
ディルクにはそこまで手が回らず、いつも持っていった花をただ置いてくるだけだが、鳥が運ぶ種が根を付けるのか、墓は全体が緑で覆われ、小さな花が咲いていることもある。
その墓の区画の中を歩いている人間がいたのだ。しかもふたり。どちらも女性だ。ひとりはピンクがかった金髪でふらふらと落ち着かない足取りで歩き回っていて、もうひとりは頭巾らしきものをかぶり、彼女を支えるように手を添えている。
三年ほど前。
墓参りに訪れたディルクは、まるで夢うつつの中で生きているようなパウラに出会ったのだ。
ドルテア国の一般的な墓は個人ごとに作られ、使用年数は契約によって決められる。契約年数を超えた墓地は新たに契約した他の人間のものとなるのだ。
王家や大貴族はその例に入らず歴代の墓を持っているが、ドーレ男爵家はそこまでの大貴族ではない。加えて、事件を起こしての心中と自殺だったため、母方の親族は誰もが関わるのを嫌がった。結局、クレムラート伯爵の計らいで、ゆかりのある教会が管理している墓地の一角に墓が用意され、ディルクの両親と妹は横並びの三区画に埋められている。墓地使用料は没収された財産の中からの差し引かれ、通常の年数――二十年分の使用料が支払われているという。
早くに死なれたので、自分が生きている間くらいは、追加で支払うこととなるだろうとディルクは思っていた。
墓は自分の土地と同じ扱いになり、周囲に花を植えたりすることも可能だ。周りには、庭のように整えられた墓ががいくつもある。
ディルクにはそこまで手が回らず、いつも持っていった花をただ置いてくるだけだが、鳥が運ぶ種が根を付けるのか、墓は全体が緑で覆われ、小さな花が咲いていることもある。
その墓の区画の中を歩いている人間がいたのだ。しかもふたり。どちらも女性だ。ひとりはピンクがかった金髪でふらふらと落ち着かない足取りで歩き回っていて、もうひとりは頭巾らしきものをかぶり、彼女を支えるように手を添えている。