マドンナリリーの花言葉

「あら……? 誰かしら。トマス……にしては前に乗っているのが女性のような」

「そんなわけありませんっ」


マルティナが急に前のめりになるが、その途端稲光が走り、「きゃあっ」とおびえながらエミーリアの後ろに隠れた。微笑ましい彼女の姿にエミーリアは思わず笑いだした。


「違うわよ、よく見たらあの黒馬はヴェラだわ。ディルクの馬よ」

「そういえばディルク様もお出かけでしたわね。では、前に乗っているのは……?」


悩むよりは見に行ったほうが早いと、女性陣は一階へと移動した。しかし、玄関で待てども待てども姿は見えない。


「遅いわね」

「ディルク様なら裏口から入ってくるんじゃありません?」


使用人らしくメラニーが気づき、慌てて三人は移動する。


「困ったわね。フリードったら、ディルクより先に帰ると言っていたのに。どう誤魔化せばいいかしら」


足早に歩きながら、エミーリアはひとつため息をついた。


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