マドンナリリーの花言葉


とはいえ、お風呂を下っ端のローゼが先に使うわけにはいかない。温かいお湯をたらい一杯分もらい、体をタオルで拭いて着替えることにした。

雷鳴は遠ざかったが、雨はまだしとしとと降り続いている。
体は乾いたが髪はなかなか乾かない。乾いたタオルを押し当てて水分を吸収させていると、にわかに屋敷は騒がしさを増した。

あまりに忙しいようなら手伝ったほうがいいだろうか、と思っていた矢先、同室のジルケが駆け込んできた。


「ローゼ、帰ってる? 悪いんだけど手伝ってほしいってナターリエ様が」

「ええ。お客様がいらしているのよね?」

「よく知っているわね。エミーリア様のお兄様、ベルンシュタイン伯爵子息のギュンター様よ。もうねー、フリード様とは違った感じで格好いいわよー。クール! 流石エミーリア様のお兄様!」


濡れた髪は結んでいれば気にならないだろう。
興奮した様子のジルケに髪を結んでもらい、部屋を出る。ヒヤリとした風が首元を通って思わずくしゃみが出た。


「くしゅん!」

「やだ、ローゼ、風邪?」

「大丈夫。ちょっと濡れたから冷えただけ」


若干寒気はしたが、急な来客で屋敷は大忙しだ。新米として仕事を断ることはできない。

ジルケとともにナターリエのもとへ行くと、客間のシーツ交換を頼まれる。
ふたりはリネン室にいき、アイロンのかけられたシーツを取り出し、客間へと持っていった。
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