マドンナリリーの花言葉

と、目の前に大きな背中が立ちはだかった。

ギュンターに掴まれていた手がゆるみ、そこに大きな手が乗せられる。
それがディルクのものだと分かった瞬間、ローゼは心の底からホッとした。


「ギュンター様。落ち着いて下さい。彼女はここの使用人です。お話があるならまずフリード様を通していただけますか。話はそれからです。……ローゼ、下がっていい。部屋に待機していなさい」

「は、はいっ」


ローゼは立ち並ぶ面々に頭を下げ、足早にその場を立ち去る。

ドキドキし過ぎて心臓が壊れそうだ。
ギュンターとは初対面のはずだ。なのに、何故あんなに驚いた顔をされるのだろう。

エミーリアが心配するように、見初められた?
でも、彼の言葉を思い返せばそういう内容ではなかったような気もする。

ローゼはナターリエのところに行き、先ほどの一部始終を報告した。


「アンタは働き者でいい子だけど。顔も良いから……結構トラブルも巻き起こすねぇ」


呆れたように言われて胸がチクリと痛む。好きでそうなっているわけじゃないとはいえ、周りがいい気がしないだろうというのはわかる。


「まあ、ギュンター様のおっしゃるように下がっていなさい。今日は休みだったのに悪かったね」


謝られて、少しだけ気持ちが落ち着いた。


「くしゃん」


驚きから火照っていた体も徐々に冷めてくる。ローゼは身震いをして部屋へ向かった。

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