マドンナリリーの花言葉
「やれやれ、君たちは仲がいいな。俺はお邪魔かな」
ギュンターがからかうようにいうと、フリードは照れたように笑う。
「そんなことはありませんよ。エミーリアはギュンター殿のことが大好きなのだとよく言っています。だから余計気になるんでしょうね。奥様とは違う女性に構われると」
「そういう意味であのメイドを連れてきたいわけじゃないんだがな」
ギュンターもブランデーを口に含む。
そしてちらりとディルクに視線を送った。
「エミーリアは部屋で寝かせたほうがいいかもしれないね。従者くん、悪いが彼女を部屋まで連れて行ってくれないか」
「いえ、エミーリアなら俺が」
フリードが立ち上がろうとすると、ギュンターは首を振った。
「君はここに。ふたりで内密の話がしたい」
「ああ。……そうですね、ディルク、頼めるか」
「ええ。では失礼いたします」
いつものフリードならば、エミーリアをほかの男の手に託すようなことはしないのだが、義兄の言うことには逆らい難いらしい。
どちらにせよ、自分がいては話が進まないのだろう、とディルクはエミーリアを抱き上げて部屋を辞した。
フリードに自分の意思は伝えてあるのだ。ギュンターがどんな要求をしてくるのかは知らないが、こちらの意思を無下にするような主人ではない。