マドンナリリーの花言葉

そこでの会話はフリードに任せ、ディルクは二階の奥方の部屋まで行き、続き間にいるメラニーに扉を開けてもらってベッドに寝かせる。


「俺が出てから着替えさせてあげてほしい」

「かしこまりましたわ」


そのまま部屋を出て、手が空いたので馬の様子を見に行くことにした。
普段は二人乗りなどしないし、雷雨の中を無理させた。従順な馬とはいえ牝馬には愛情をもって接さなければならない。

雷は遠ざかったが、雨はまだ降り続いていた。ディルクは外套をかぶって、厩まで走る。
突然現れたディルクに、馬たちは少し驚いたようだが、ヴェラがいち早く気づいてヒンヒンと喉を鳴らした。


「元気か? 今日は悪かったな。また今度、天気のいい日に出かけよう」


ヴェラの首の毛を撫でながら、ローゼもここを撫でていたなとふと思い出す。

驚くほどパウラ夫人にそっくりな彼女。
血縁関係の疑いは、完全に晴れたわけではない。
しかし、彼女はパウラのことなど何も知らなそうだったし、嘘のつけるタイプではないな、というのが彼女から受ける印象だ。


「他人の空似ということもあり得る」


ディルクは甘えるような声を出したヴェラを撫でながら、ローゼのことを考えていた。

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