マドンナリリーの花言葉

「君自身が王家と親しくなるという手もあるよ。今度クラウスを紹介しよう。君のところはご両親が亡くなっているから、年代的に国王のところに入り込むよりは王子相手のほうがいいだろうし。後は父にそれとなくディルク君のことを伝えておこう。父は国王様とは懇意でね。国王様を落とすなら俺からよりも父経由のほうが効き目がある」

「本当ですか? ありがとうございます」

「その代わり、俺の頼みも少し聞いてほしい。実はね、さる高貴なお方から、肖像画に描かれた女性を探すように頼まれている。手がかりがなくてね。それを描いたという画家は行方知れず、モデルの女性についても描かれた外見以上の情報はない。その肖像画の女性と、先ほどのメイドが似ているんだ」


もう部屋に戻ったエミーリアを警戒しているかのように、ギュンターは少し声を潜めた。


「ああ、それで。……愛人にしたいわけではないんですね」

「当たり前だろう。全く、エミーリアも人の話を聞かないから……。まあそういうわけで、彼女をベルンシュタイン家に連れてきて、依頼人と対面させようかと思っていたんだが」


ギュンターは足を組み、考えるように口もとを押さえた。


「だがたしかに、コルネリアにあまり心配をかけたくはないんだ。今は懐妊中で無理もさせたくないし……。先ほどの君の話と合わせて考えれば、他にもいい手はあるな。今度クラウス第二王子に夜会を主宰させよう。そこに君を招待する。ただし条件があるんだ。側近としてディルク君と、エミーリアの侍女としてあのメイドをつれてくること」

「それは……」

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