マドンナリリーの花言葉
「もうわかっているだろう? 絵画に描かれた女性を探しているのはクラウスだ。君だから話すんだよ。他のものには内密に。エミーリアにもだ」
フリードは息を飲んだ。第二王子がただのメイドを所望するのだとしたら、とんだスキャンダルだ。
「……ディルクにも言ってはダメですか? というか、俺はあいつに隠し事をしてもすぐばれてしまうんですが」
「彼は口が堅いかい?」
「ええ、もちろん」
「で、あれば絵画に描かれた女性を探しているところまでは言っても構わないよ。それがクラウスだという名言は避けてほしいけれど」
「分かりました」
フリードはブランデーを一口飲む。
ギュンターを通してクラウス第二王子と接触を図るという当初の目的は達成できそうだったが、そこにローゼが絡んでくるのは予想外すぎて、対応に迷う。
「あの、メイド……名はローゼというのですが、クラウス様が彼女を見初めたとしたらどうなりますか?」
「そうだな。さすがに正妻には無理だろうね。ある程度の家柄はないと難しいな」
「……愛人にというならば会わせられません」
フリードが真面目な顔で言う。
結構酒は進んでいるはずだが、たいして酔っていないのだろうとギュンターは思った。
「だとすればディルク君の話もなしになるよ? いいのかい?」
「仕方ありません。俺には自分の使用人を守る義務もあります」
まっすぐな瞳を持ったフリードに、ギュンターは好感を抱いた。口元を緩め、楽しそうに笑う。