マドンナリリーの花言葉

「なるほど。君はエミーリアが惚れるだけあるね。分かった。いいよ、大丈夫、クラウスが無理難題を言い出した時は俺が止める」

「義兄上?」

「俺はこれでもシスコンでね。妹の夫である君の頼みを断って、妹に嫌われるのは恐ろしいからね」


パチリとウィンクをして見せたギュンターに、フリードは立ち上がって両手を握る。


「ありがとうございます」

「やめてくれよ。こっちの頼みも聞いてもらっているんだ。おあいこだろう」

「義兄上が味方になってくれるのならば百人力ですので」

「どうかな。一応俺にはクラウスとの友情もあるしね。いざというときにどちらを優先するかは明言できないけれど。……まあとにかく約束はしたよ。明日屋敷に戻ってから、王宮に行って話をしておこう。多分招待状が出せるのが一ヵ月後になると思う。それまでに、メイドの娘に少し礼儀教育をしてもらえると助かるかな」

「そうですね。侍女としての教育をしておきます」

「頼むよ」


フリードとギュンターは顔を見合わせ、再びグラスを合わせた。
ふたりとも、まだまだ酔う気配はなく、途中様子を見に来たディルクは、酒瓶が一本空いているのを見て、額を押さえた。


「……もう一本いりますか?」

「いや。いいよ。そろそろ部屋に下がろう」


ギュンターが立ち上がり、少しも酔った気配を見せずに歩き出す。
ディルクはフリードに頭を下げ、ギュンターを部屋まで案内する。そして戻って、座ったままのフリードに水を差しだした。

< 76 / 255 >

この作品をシェア

pagetop