マドンナリリーの花言葉
「なるほど。君はエミーリアが惚れるだけあるね。分かった。いいよ、大丈夫、クラウスが無理難題を言い出した時は俺が止める」
「義兄上?」
「俺はこれでもシスコンでね。妹の夫である君の頼みを断って、妹に嫌われるのは恐ろしいからね」
パチリとウィンクをして見せたギュンターに、フリードは立ち上がって両手を握る。
「ありがとうございます」
「やめてくれよ。こっちの頼みも聞いてもらっているんだ。おあいこだろう」
「義兄上が味方になってくれるのならば百人力ですので」
「どうかな。一応俺にはクラウスとの友情もあるしね。いざというときにどちらを優先するかは明言できないけれど。……まあとにかく約束はしたよ。明日屋敷に戻ってから、王宮に行って話をしておこう。多分招待状が出せるのが一ヵ月後になると思う。それまでに、メイドの娘に少し礼儀教育をしてもらえると助かるかな」
「そうですね。侍女としての教育をしておきます」
「頼むよ」
フリードとギュンターは顔を見合わせ、再びグラスを合わせた。
ふたりとも、まだまだ酔う気配はなく、途中様子を見に来たディルクは、酒瓶が一本空いているのを見て、額を押さえた。
「……もう一本いりますか?」
「いや。いいよ。そろそろ部屋に下がろう」
ギュンターが立ち上がり、少しも酔った気配を見せずに歩き出す。
ディルクはフリードに頭を下げ、ギュンターを部屋まで案内する。そして戻って、座ったままのフリードに水を差しだした。