【短編】Rain
私は、この高校に入ってから現在までの約三年間、目の前にいる彼、瀬川那智(せがわなち)に恋をしている。
彼とは高校一年生の時に同じクラスで、名前の順が前後だったことをキッカケに仲良くなった。周りに付き合っていないのが不思議だと言われる程度には仲良くなり、私達は常に一緒にいた。
那智と出会い、好きになるまでに時間は全くと言っていいほどかからず、私は、彼と一緒にいる殆どの時間を彼に想いを寄せ続けながらいた。
だけど、その想いもついに報われないものになってしまったらしい。
「ありがとう。花には、ちゃんと言うときたかったから」
いつも私に向けている優しい表情を浮かべる那智。だけど、今日からは、その笑顔の理由は私じゃないのか。そう思うと、言葉で表せないくらい苦しい感情が胸にいっぱい溢れてきた。
「おめでとう」
悔しい。悲しい。苦しい。
堪らない負の感情と大きな後悔ばかりが押し寄せてくる。
ついさっきまでは頭の片隅にもなかった出来事たちが、今更、後悔として頭の中を駆け巡った。あの時、ああしていたら。あの時、こうしていたら。彼の彼女になれたのは私だったかもしれないのに、なんて、そんな後悔とあって欲しかった未来が描かれていく。