【短編】Rain
「あ、那智くん、花ちゃん。ごめんね。お話中に」
「ううん、ええよ。俺も今行こうと思ってたとこやったし」
私の見たことのない表情で彼女と話している那智。悔しいけれど、やっぱりお似合いやな、なんて思ってしまう。
「悪い。先、帰るわ」
「あ、うん」
また明日、と手を挙げると、那智と隣に並ぶ彼女も笑顔で手を振った。
二人並んで消えていく後ろ姿を最後まで眺めた後、私は雨の打ち付ける窓から外を眺めた。
傘をさして正門まで歩いていく人達を見ながら、私はふと那智と出会って間もない頃の出来事を思い出した。