【短編】Rain
* * *
「うわ、最悪」
入学してちょうど一ヶ月が経った高校の玄関口。靴を履き替え、ガラス張りのドアから外の景色を見た私は一人呟いた。
激しく地面を打ち付ける横殴りの雨を見て、私は傘を持ってきていないことに気がついたのだ。
今日、雨予報やったっけ。
そんなことを思いながらぼうっと突っ立っていると。
「今日、どのニュース番組見たって大雨予報やったやろ」
まるで私の考えていたことを読み取ったかと思うような言葉が、背後から聞こえてきた。
驚いて後ろを振り返ると、そこには、名前の順が前後で私の前の席に座っている瀬川くんがいた。
「瀬川くんか。私の考えてたことの返事返ってきたからテレパシーでも使うたんかと思ったわ」
私がそう言って笑うと、彼も「ほんなわけあるか」と言って笑った。
入学初日から彼は不器用そうな割に気さくで優しくて、好感を持っていた。私は、彼と話をできたことが単純に嬉しくて自然と笑みが溢れていた。