マーケット部政談
受け取ると、その地味子ちゃんはその場であんぱんの袋を開けて、勢いよく頬張った。
よっぽどお腹が減っていたんだと思う。
もしかして、あの古いガマ口は、小銭入れなんかじゃなくて、地味子ちゃんの財布。しかも、10円玉で10枚で100円を払ったところから察するに、地味子ちゃんはあんまりお金がないのかもしれない。
「あの……あんぱん1つ余ってるんですけど、よかったら持って行きませんか?」
「え? いや、でも、私、お金がないので……。」
「大丈夫ですよ。これがなくならないと私、昼食抜きなんで。それに、これを機会にまた買ってもらえるならいいかなって。」
「……いいんですか?」
「もちろん!」
地味子ちゃんは深々と頭を下げて、私から両手であんぱんを受け取った。顔を上げたその目には、涙が流れていた。