マーケット部政談
「首……を? ど、どうして! どうしてですか!」
私は演劇部の人の肩を揺らした。演劇部の人は、俯いたまま静かに話し始めた。
「キミが橘くんに売り上げをあげたことを橘くんから訊いた。橘くんは、さすがに悪いからってキミに売り上げを返そうとしてたんだ。それを聞いていたうちの部長が、借金の返済としてその売り上げを奪ったんだ。橘くんはそれだけはやめてくれって泣いて頼んだんだけど、部長は聞かなくて……。それで、キミに気の毒だからって延長コードを使って、首を吊って、今、救急車で運ばれたところなんだ。」
なんてことだ……親切でやったつもりが、地味子ちゃん……いや、橘さんを苦しめていたなんて……。
「……円お姉ちゃん、聞いてた?」
「聞いてたわ。酷い話ね。確かに機材を壊したのは、その橘って子が悪いけど、何もそこまで……。」
「いや、そうじゃないんです。」演劇部の人が口を挟んだ。
「橘くんは、部長に言われた通りの配線をして、機材を壊してしまったんだ。部長が音響機材のことをよく知らなかったことが悪いんだ。でも、部長は、責任と弁償代逃れのために、橘くんに全部罪を擦り付けたんだ。」
「何よそれ! よっぽどクソ野郎じゃない、その部長! 遊美、あんたが気にすることないわ。悪いのは演劇部の部長よ!」
……。
「どうしたの? 遊美?」
「……許せない。」
私は演劇部の部室を飛び出した。