ハニー♡トースト
揺れる想い
「あ、いたのか」
朔弥の目がこちらに向く。その目が不機嫌そうに細められる。
「お前、支度に時間かかりすぎ。そんなやることねぇだろ。ていうか来たなら声かけろよ」
「…すみません」
朔弥はため息をつく。それだけで、胸がズキっとする。ダメなやつだって思われたくない。
朔弥はこちらに歩いて来たかと思ったら、私の腕を掴んで引っ張った。
「いつもみたいに反抗してこいよ。調子狂うだろ。」
行くぞ、と言って私の手を繋いだまま歩き始めた。
ドキドキが、鳴り止まない。触れられたところと顔が熱くて死にそう。
…分かってやってるの?それとも無自覚?
私がこんなにあなたの言動一つで振り回されてるの、気づいてるの?
私は喜びでにやけそうな顔を必死に抑える。
ふと、横を通った橘さんの顔が視界に入って、私の思考は一気に遮断された。
橘さんが、こんなにも傷ついている顔。
…見たことない。見たく、なかった。
私は気づく。当たり前のことを、ここに来てやっと。
朔弥の特別になりたい人は、私だけじゃないんだ。