ハニー♡トースト
車が学校の前に着き、朔弥は車を降りた。
「いってらっしゃいま…」
言葉の途中でドアがバン、と閉められる。
「…どうか嫌にならないであげてくださいね」
前から声がして、私は運転手の林さんを見る。
「朔弥様は、冷たくしているようで本当は自分が1番傷ついているんです。突き放されることの怖さを1番知ってるのは朔弥様ですから。」
「…え?」
「愛されることのあたたかさを知らないんです。だから、恐れてしまう。愛されて、大切にされて、突き放される怖さを知っているから。」
「それって、どういうことですか?」
「…私の口からは言えません。」
朔弥の高校を出てからすぐ、車は私の高校に着いた。
「ひなさんにも、いつか分かるといいですね」
私は優しい林さんの笑顔に自然と頷いていた。
まだいるんだ。私の知らない、あなたが。