ハニー♡トースト
「…だから、もう少し神宮寺家にいたい。」
お父さんの目を、見つめる。
「私にとって、お父さんも朔弥様も大切な人なの。…こんなに、家族以外の誰かの側にいたいって思ったのは初めてなの。どっちかなんて選べない、だから私は2人とも大切にしたい。」
自分勝手だってわかってる。それでも、言わずにはいられない。
「神宮寺家でこれからも働くよ。でもお休みの日はお父さんのところに帰る。…だめ、かな?」
お父さんはしばらく表情を変えなかった。でも、すぐに優しい笑顔になると、「わかった」と言ってくれた。
「ひながワガママ言ったの、初めて聞いた。なんか、嬉しいよ。」
お父さんはそういうと立ち上がり、朔弥に向かい合った。
「…朔弥くん。ひなは、俺の宝物だ。…だから、どうか、大事な娘を宜しくお願いします。」
頭を下げたお父さんに、朔弥も深く頭を下げる。
「…ってこれじゃ嫁に出すみたいだな」
顔を上げて笑ったお父さんの目尻に、小さな小さな涙の粒が光った。