ハニー♡トースト


「お父さん!」


応接間で百合さんにペコペコとお辞儀をしている自分の父親にそう呼びかける。


「ひな!」


振り向いたその顔は緊張で強張っていて、私は思わず吹き出してしまう。


「あなたも初めて来たときお父様と全くおんなじ顔をしていましたよ」


「ねっ根本さんっ…!!」


突然背後に現れた根本さんに驚きながら、彼女の言葉に恥ずかしくなる。


「やっぱり親子なのね」


うふふ、と微笑む百合さんに返す言葉もない。


私はお父さんの近くに駆け寄り、カバンを持つ。


「お荷物お持ちいたします」


わざとらしくそういう私をじっと見つめて、「なんだかこうしてみると本物のメイドさんみたいだなあ」と感動する父に百合さんがまたうふふ、と微笑んだ。


「だーかーらー!本物のメイドだってば!ですよね、百合さん?」


「そうね、ひなちゃんは立派な神宮寺家に仕えるメイドさんですもの。ですよね、根本さん?」


「ちょっ、なんで根本さんに振るんですか!」


百合さん、優しく笑っているがやることは悪魔だ。

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