ハニー♡トースト


「ハニートーストです」


「ハニートースト?」


私はボウルに卵を割って泡立て器で混ぜる。


「フレンチトーストのハチミツがけ、みたいな感じです。昔、私が泣いてたときお父さんがよく作ってくれて」


私は懐かしくなって、少しおかしくなる。


「これ食べると、不思議と泣き止むんです。」


「…ふーん」


朔弥の目が私の手元をじっと見つめていることに気づく。


この人のことだ、きっと食べたいんだなあ、甘党だし。


「朔弥様の分も、作ります?」


私の言葉に、少ししてから朔弥は無言で頷いた。


その姿がなんだかかわいくて思わず笑ってしまう。


「おい、なに笑ってんだよ」


「いたっ」


不機嫌そうな顔をした朔弥にデコピンをされた。


「すみません、でもなんだか可愛くて」


次の瞬間、目の前が朔弥の顔でいっぱいになる。


鼻がつきそうなくらい、近い。


ぶつけられたおでこが、熱い。


息が、できない。


「男にかわいいは禁句」


そっと離れた朔弥はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。


彼の予想通り、きっと私の顔は真っ赤だ。


ほんと、この人には敵わない。


唇が、触れるかと思った。

< 134 / 233 >

この作品をシェア

pagetop