ハニー♡トースト
「ハニートーストです」
「ハニートースト?」
私はボウルに卵を割って泡立て器で混ぜる。
「フレンチトーストのハチミツがけ、みたいな感じです。昔、私が泣いてたときお父さんがよく作ってくれて」
私は懐かしくなって、少しおかしくなる。
「これ食べると、不思議と泣き止むんです。」
「…ふーん」
朔弥の目が私の手元をじっと見つめていることに気づく。
この人のことだ、きっと食べたいんだなあ、甘党だし。
「朔弥様の分も、作ります?」
私の言葉に、少ししてから朔弥は無言で頷いた。
その姿がなんだかかわいくて思わず笑ってしまう。
「おい、なに笑ってんだよ」
「いたっ」
不機嫌そうな顔をした朔弥にデコピンをされた。
「すみません、でもなんだか可愛くて」
次の瞬間、目の前が朔弥の顔でいっぱいになる。
鼻がつきそうなくらい、近い。
ぶつけられたおでこが、熱い。
息が、できない。
「男にかわいいは禁句」
そっと離れた朔弥はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。
彼の予想通り、きっと私の顔は真っ赤だ。
ほんと、この人には敵わない。
唇が、触れるかと思った。