ハニー♡トースト
朔弥はおもむろに立ち上がると、私の髪にそっと触れる。
「お前のことは、知っておきたい」
「…ずるいです」
そんな風に言われたら、そんなに優しく触れられたら。
拒絶できなくなる。
「…お母さんの、命日なんです」
12年前の今日、母は死んだ。
「夢を見るの、今日が近づくと。あの時の夢」
耳を塞いでも聞こえてくる、同情の言葉、心無い言葉。真っ暗な部屋で泣くお父さんの大きい、それでいてどこか小さな背中。
頭の後ろに手が回されたかと思えば、引き寄せられて私は朔弥の肩におでこを沈める。
大好きな匂い。安心する。