ハニー♡トースト
置かれてあった制服は全体的に黒でできていて、袖やスカートの裾に白いフリルが施されていた。胸元にも白のリボンがあり、腰からは白いエプロンがついている。スカートは膝丈で、白のハイソックスだ。
「か、かわいい…!」
姿見の前に立って私は思わず声をもらした。
本物のメイド服だ!!
コンコン、と扉を叩く音がして、「早く!」と根本さんのよく通る声がとんでくる。
「はいっ!」
私は思わず背筋を伸ばし、慌てて部屋から出た。
「す、すみません…待たせてしまって…」
「…ホワイトブリムもつけなさい」
「え?」
根本さんは、私の手に持っているものを指差した。
「あっはい!」
フリル付きのカチューシャのことか…
「では、おぼっちゃまのところへ向かいますよ」
そう言って根本さんは歩き出した。
「…あの、雇い主って社長さんじゃないんですか…?」
「…違います。社長は仕事も忙しく、なかなかここには帰って来ません。メイドの追加だって、おぼっちゃまの…」
そこまで言ったところで、根本さんはハッとして口をつぐんだ。
「とにかく、あなたの雇い主は神宮寺家の一人息子、神宮寺朔弥様です。」
「…はい」
…あまり、歓迎されてはいないみたい