ハニー♡トースト


「ちょ…やだ…」


「あー…ねみぃ」


肩にぐりぐりと顔を押し付けられて、心拍数が一気に上がる。


心臓壊れちゃうよ…


「あ…の!これって…」


「なんでもない」


「え、でもこれ…」


「なんでもない」


有無を言わさぬ朔弥の声に、私は黙ってしまう。


「…あ!って時間!朔弥様、早く支度してください!」


遅刻でもしたら、殺される。この横暴ご主人様に。


本当に、なんと理不尽な。


頭の中に、さっきの写真が浮かぶ。


あれって、朔弥は誤魔化したけど…お母さん、だよね?


「朔弥様、お母さんの話って、聞いてもいいですか…?」


大きな、でもどこか寂しそうな背中を、そっと見つめる。


「…俺を置いて出てったきり、あとは知らない」


朔弥はそれだけ言うと黙ってしまった。


『ひなさんにもいつか分かるといいですね』


前に言われた林さんの言葉を思い出す。


あなたの傷が、少しだけ見えた気がした。


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