ハニー♡トースト
私たちは3階まで上がり、曲がってすぐのところの部屋で立ち止まった。奥にもう一室あるが、そこは社長の部屋だろうか。
「失礼します、お坊っちゃま。根本です」
トントン、とノックしながら根本さんは言った。
「入れ」
根本さんは扉を開き、中に入る。私もつづいて入った。
私の貸してもらった部屋の倍以上ある部屋。ものはあまり置いてないが、真ん中に大きなソファが置いてあり、そこに寝そべってこちらを見る人がいた。
神宮寺家の一人息子、神宮寺 朔弥。
白い肌の小さな顔に、少し茶色がかった髪の毛、大きな目、スッとした鼻。とても、整っている。
これが世に言うイケメンか…
1人で納得していた私の脇を根本さんがつつく。
「挨拶」
根本さんの鋭い眼光にハッとする。
「本日付で働かせていただきます、桜田日向子です。よろしくお願いします!」
「歳は?」
「あ、16です。」
「ふーん、じゃあ俺と一緒だ」
そう言うと彼は立ち上がり、私の目の前で止まる。
手が伸びてきたかと思うと、突然顎を掴まれ、顔が無理やり上に引っ張られる。
「ん!?!?」
目の前に、整った顔。思わず、息を止めてしまう。
「…まあまあだな」
「へ?」
今、完全に私の顔見て言ったよね…?
顎を挟む手にグッと力が入り、思わず顔を歪める。
「んっ…」
「いいか、今日からお前は俺専属のメイドだ。こき使わせてもらうからな?」
にやり、と端整な顔が不敵な笑みを浮かべた。
…嫌な予感がする。