ハニー♡トースト
「懲りないですね、あなたも」
階段を拭いていたそのとき、きれいに磨かれた革靴が突然視界に入ってきた。
顔を上げなくても分かる。社長だ。
私は立ち上がって、彼の目を見る。
「懲りません」
「そうすれば、いつか会えると?受け入れられると?」
私は目を逸らさない。逸らしたら、負けだ。
「そんな日は来ない。朔弥は、君を待ってない」
それだけ言って、社長は階段を上がっていった。
私は雑巾を持つ手に力を入れる。
…刺さるなぁ、ほんと。
私は震える肺を落ち着かせて、深呼吸をする。
そうしないと、保っていられない。
待ってない、か…。言葉通りなんだろう。朔弥はこの状況に対してきっと何も言ってない。
分かっていたはずの事実が、私の胸を何度も貫く。
私はしゃがんで、仕事を再開する。
諦めない。絶対。
たとえ「いつか」が永遠に来なかったとしても。