ハニー♡トースト
書斎を出て、思わずため息をこぼす。
「怒らせたな…」
親父の言うことはいつだって正しい。
俺は神宮寺家の一人息子で、この家を継ぐのは俺の使命だし、俺の意思でもある。
日向子と俺は、使用人とメイドだ。
好きだと言われても、どれだけあいつが泣いても、苦しんでも、それは変わらない。
交わることはない。決して。
そんなことは、分かっている。
永遠がないことだって、分かっている。
悠人から、橘から、あいつの様子を聞くたびに苦しくなる。
なんでやめないんだ。なんで離れていかないんだ?
なんで、こんなにかき乱される?
「…どうしたらいいんだ」
虚しいつぶやきは、冷たい壁に吸い込まれた。