ハニー♡トースト
「おい、おせーよ」
私のつま先の前に、誰かの靴がある。
そっと顔を上げて、私は叫びそうになるのを必死にこらえた。
「さ、くやさま…なんでここに…」
「お前が全然来ねーから逃げたのかと思って捕まえにきた。」
にやり、と笑いながら朔弥は言った。
周りがざわついているのがわかる。
…まあ黒塗りの高級車が校門の前に停まったかと思ったら中から出てきたのがこんなイケメンでしかもかの有名なエリート高校の制服を着たやつなんだから、注目しない方がおかしい。
「朔弥様のせいで目立ってるんですけど。」
「とーぜんだろ?」
相変わらずムカつくドヤ顔を見せてくる。
…ムカつく、はずなのに、なんでだろ。
私、安心してる…
「あと…」
朔弥がそう呟いたかと思ったら、突然後頭部を掴まれ、胸板に顔が押し付けられる。
「ちょっ」
「こいつ今、俺と一緒に暮らしてるから。…かわいそうなわけねぇだろ?」
キャー、と女子から悲鳴が上がる。
「行くぞ」
そう言って朔弥は私の腕を引っ張って車に向かう。
あ…もしかして。
今、助けてくれた??