ハニー♡トースト


「…お前、顔赤いけど?」


隣から明らかににやついているであろう朔弥の声が聞こえてきた。


「…き、急にああいうことするのやめてください!」


本当に自分の赤面症を恨みたい。


「…さっき、助けてくださってありがとうございました」


「あ?勘違いすんな。あいつら俺と同じ空間にいることのできるお前をかわいそうとか言いやがって…腹立ったから言っただけだ」


…ナルシストめ。


…それとも、こいつなりの優しさなのかな?


「…お父さんが借金したって聞いたときは、驚きましたし、やっぱりショックでした。でも、親友のためだと思ってやったことが結果こういうことになったって…バカですよね。お人好しっていうか。」


気づいたら、私の口は勝手に動いていて。
余計なことだって分かっているのに。


「私、優しいお父さんが大好きなんです。私の自慢だし、世界中で1番素敵なお父さんだって本気で思ってます。だから、私は自分のこと全然かわいそうだなんて思わないし、そう思って欲しくもないんです」


貧乏でも、離れることになっしてまっても。


それでも、私のお父さんがお父さんでよかった。


そう思えるから、私は全然、かわいそうなんかじゃない。


「…安心しろ、お前は俺みたいなやつに雇ってもらえて、世界で1番幸せなメイドだよ。」


朔弥の言葉に、私は自然に笑みがこぼれる。


「ふっ…うっざー」


「おい、お前それがご主人様に対する態度か?」


ぎゅっと、手でほっぺを両側から挟まれる。


「いひゃいれす」


「ばーか、辛気臭い顔してんじゃねーよ」


あ、また。


優しい、笑顔…


…ワガママで俺様で、ものすごく腹立つやつだけど、こいつのこの顔だけは、嫌いじゃないかもしれない。

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