ハニー♡トースト
「朔弥様、もうお昼になりますよ。そろそろ行きましょう」
猫と戯れている朔弥にそう言って、私はジョウロやほうきを片付ける。
「んー。じゃあな」
朔弥は最後に猫の頭を優しく撫でてから、「行くぞ」と言って食堂に向かう。
「…私にもあれくらい優しく接してもらえると嬉しいんですが」
朔弥の横に並んで歩きながら、いつもの仕返しに少し意地悪を言ってみたりする。
「ん?撫で回して欲しいの?」
スッと腰を撫でられ、私は思わず朔弥の手をはたく。
「ほんと、セクハラで訴えますよ」
「ってーな。まじでかわいくねえやつ」
カチン、とくるが必死にこらえて前を向く。そこで私は向こうから歩いてくる人に気づいた。
(あ…橘さんだ)
少し伏し目がちに歩いているのは、朔弥に気づいているからだろう。
ちなみに1ヶ月経ったが、橘さんはやはり私のことが嫌いみたいだ。そしてなぜかライバル意識を持たれている。
近づくにつれ、橘さんの頬がほんのり紅いことに気付く。
…本当に好きなんだな、朔弥様のこと