ハニー♡トースト


お屋敷について部屋に戻る途中、ふと朔弥に聞いてみた。


「さっきのお友達のお名前はなんていうんですか?」


「あ?なんでそんなこといわなきゃなんねーんだよ」


「いや、聞きそびれてしまったんで…」


「…お前ひなちゃんとか呼ばれてたよな」


朔弥が立ち止まったので、私も少し後ろで止まる。


「俺のいないところで男たぶらかしてたんだ?」


にやり、と得意の意地悪そうな顔。


「なっ!違います!」


一歩近づいてきた朔弥から逃げるように一歩後ずさる。


「命令、動くな」


そう言って朔弥は私との距離を一気に詰める。


(ち、近い…)


この人のパーソナルスペース狂いすぎ…


朔弥の指が首の後ろをスッと撫でる。


私は声が出ないようにぐっとこらえた。


「ふーん、抵抗するんだ?」


次の瞬間、耳に何かが触れたかと思ったら、突然噛まれ、ビクリ、と体が震える。


「ひゃあ!」


顔が熱くなる。足から力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。


「ふっ相変わらずだな、その赤面症」


私は耳をおさえて、変態悪魔を睨みつける。


「…バカにしないでください」


「別にしてないけど?かわいいなって思っただけ」


…え?


私はぽかん、として朔弥を見るが、朔弥はいたって普通の顔だ。


…幻聴?いや、でも…


今確かに「かわいい」って…


「桜田さん!!!」

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