ハニー♡トースト
「…朔弥様は、別に私がやめてもなんともないですよね。代わりなら、たくさんいるから」
そうだよ、私じゃなくてもいい。
こんなの、たまたま私だっただけだ。
「私だって、もう理不尽な要求されなくてすみますし。本当にワガママばっかでしたよね」
私はマッサージの手を止める。朔弥の肩の上でギュッと拳を握る。
「…なのに、なんで私がこんなに苦しくならなきゃいけないんですか?」
…言っちゃダメだ。私のわけのわからない気持ちに、この人を巻き込んだらダメだ。
「ムカつくはずなのに、朔弥様の言葉一つで勝手に傷ついて、かと思ったらあなたの言葉で嬉しくなって、こんなのおかしいですか?」
ダメだと分かっているのに、言葉が溢れる。
怪訝そうな顔をして、朔弥が振り返る。
「今までどんな顏して話してたかなとか考えちゃって、顔もうまく見れないし、なにもされてないのに考えただけで熱くなって、触れたらもっと熱くなって」
「おい、落ち着け…」
「こんなの、初めてすぎて自分でももうなにがなんだかわからな…」
「日向子!」
声にハッとして、私は言葉を止めた。顔が、熱い。
朔弥の真剣な目が、私を射抜く。
目を見ていられなくて、私は目を伏せる。
…呆れられた。気持ち悪いって思われた…