ハニー♡トースト
はじめてのきもち
「朔弥、ごめんね」
そう言って、泣きながら俺の体を抱きしめる母さん。
母さんの腕の中があつくて、俺はその温もりから決して離れまいと母さんの服を強く掴む。
「好きよ、大好きよ。世界で一番愛してるわ」
母さんの腕の力が強くなる。俺は苦しいのを堪えて必死で母さんを抱きしめ返した。
母さん、なあ。
なんでそんなに泣くんだよ?
その時突然、母さんを抱きしめていたはずの手が宙をつかんだ。
いたはずの母さんはもうどこにもいない。
そこで、俺はやっと気づいた。
これは、昔の記憶だ。
俺を捨てた母さんとの最後の記憶だ。
俺は何度も思う。信じなければよかったって。
好き、なんて。愛してる、なんて。
信じなければよかったのに。