君の瞳にわたしが映っても(完)

「はーい、席についてー。」


いつの間にかHRが始まっていた。


わたしは眠気と必死に戦っている。


家は恐怖でしかないため、学校で睡眠をとろうなんて考える私はおかしいのだろうか。



そんな時、前の席から紙が回ってきた。


だるい気持ちでその紙を開くと…



『お前なんかあった?なんか、朝から元気ないから』


男子らしい力強い字で書かれたそれに、胸の奥がドクンと跳ねる。


この字、わたしよく知ってるよ…だって小さい頃、わたしが教えた字だもん…わすれるわけないよ。

これって、誰宛て…?


私が後ろに回そうとすると、前の子が慌てて首を振った。えっ…わたしに…?



思わず顔を上げると、相川の大きな背中が見えた。



相川の男らしい背を見つめて、思わず唇を噛みしめた。


開け放した窓が相川の黒い髪を揺らしている。

その姿はそのまま絵になるんじゃないかってくらい綺麗で、白石さんの他にも無数の熱い視線が注がれているのを私は知っている。

体育祭の時もそう、文化祭の時もそう。不器用だけど誰よりも優しくてカッコイイ相川はいつだって女子の憧れで。

私の自慢の幼馴染。


だけどそんな相川のキリッとした目は揺れていて、きっとわたしが読んでいるのかを気にしているのだろう。


でも、言えるわけない。


相川に嫌われたくないから。


引かれたくないから。




言えない。




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