君の瞳にわたしが映っても(完)

わたしは自分が家にいることがばれないように、すべての電気を消して、息を潜めた。



強がりだった自分は、夜遅くになるにつれ消えていった。



その代わりに震えと涙だけが込み上げてくる。


大丈夫、大丈夫。


家の中には入れない。


あの時の記憶が蘇ってきて、わたしは思わず吐いてしまった。


助けて…


助けて…



「お兄ちゃんっ、助けて…」



だけどその願いは届くことなく消えてしまった。


結局その日、彼が現れることはなかった。

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